コスモ石油エコカード基金は、コスモ・ザ・カード・オーパス「エコ」、コスモ・ザ・カード・ハウス「エコ」のお客様から毎年お預かりする500円とコスモ石油グループからの寄付金を、環境保全活動を行うNPOなどに寄付することで、その活動をサポートしています。

北タイ山岳地帯 共有林地図作成 現地視察(2010/10/2-5)

皆さま、はじめまして。コスモ石油エコカード基金事務局員の菊池と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。

今回私は、タイ王国の北部の都市、チェンマイを拠点として森を守る人を支えるプロジェクトをすすめている「北タイ山岳地帯 共有林地図作成」の活動を視察してまいりしたのでご報告いたします。

チェンマイに向かいましたのは、日本はまだ蒸し暑い10月初旬。バンコクから北に約700km、「北方のバラ」といわれる緑あふれる北タイ最大の都市、そして歴史のある古刹の都です。
「チェンマイへようこそ!」チェンマイ国際空港でお会いしたプロジェクトパートナーである、Linkの会長 木村茂さんは、タイの暑さに負けないくらい熱いものを感じさせる元気な方でした。

翌日、視察に同行していただいたのは、木村さんと、Linkの現地スタッフであるパンさん、そしてドライバーの3人です。パンさんは、いつもニコニコして優しい人柄がよく伝わってきます。
コスモ石油エコカード基金は北タイにおける山岳地帯の農村における「地図づくり」を支援しています。この地図づくりにはGPSを活用するなど様々なノウハウが必要ですが、パンさんは村の方々とともにその作成を行っています。

ところで、そもそも「地図づくり」が、なぜ環境の修復・保全、あるいは次世代の育成というコスモ石油エコカード基金のテーマと関係するのか?という疑問があるかと思います。
また、タイは熱帯地域の国で、チェンマイは「北方のバラ」といわれるくらいだから森林資源が豊富にあるのでは?という疑問もあると思います。

ここで少しタイの森林の状況につきまして現状をお伝えいたします。
いまタイでは、他の東南アジアの国々と同じように、開発などにより森林が急速に消失しており、森林被覆率は約25%ということです。開発の主な原因は、内外資本による大規模な森林伐採やプランテーションの展開、貧困化した人々による農耕といわれています。
ちなみに日本の森林被覆率は約67%ですので、タイの森林の少なさがイメージできるかと思います。

[写真]山のふもとに広がる大規模プランテーション 
 

では、村における「地図づくり」がなぜ環境保全につながるのでしょうか?
実は、タイではこれ以上森林が消失しないように、1980年代以降、本格的な森林保護政策がすすめられ、すべての森が国有林に指定されたということです。
とすれば、国有林化により森林が保全されて良かった、という話で終わりますが、実はそう簡単な話ではないようなのです。

タイの山岳地帯には、タイ系の民族だけでなく多くの少数民族が暮らしています。様々な民族がいて、それぞれに独自の文化と宗教的背景を有しています。また言語も異なります。
彼らは、森の精霊を敬い、森の恵み(動物、果物、キノコ、タケノコ、薬草、染料、建材など)に頼りつつも、必要以上のものを獲ることなく、自然と共生してきました。経済的には決して裕福ではありませんが、そこには森を中心に多様な生物に囲まれた豊かな生活が持続的に営まれていました。

[写真]森・水・土地の精霊を祭る儀式「ピティーリヤンピークンナーム」
 

もともと、東南アジアの山岳地帯で暮らしていた人たちは、焼畑農業においても森林を傷めないよう森の成長サイクルを熟知した方法で行っていました。
しかし、国有林化法は彼らの生活を一変させたといわれています。
村人たちは昔から住んでいた森から追い出され、森の恵みに頼った暮らしができなくなり、多くの村人たちが生計の糧が十分に得られない、本当に厳しい生活環境に追い込まれてきたそうです。

[写真] 木を聖なるものとして敬う儀式「ブワッパー(森の出家)」
 

また少ない予算のため国の森林監視員による密伐採等の監視も十分とはいえない状況のようです。

このような状況のもと、森を守るためには国有林化して住民を排除するのでなく、森をよく熟知している彼らにも森林保全の役割を担ってもらうほうがよい、という考えが近年提唱されてきました。
自分の部屋は自分で整理整頓するのが一番きれいになる、ということかと思います。
そのため地域によっては、森林局や国立公園局との話合いのなかで、村人たちが行政と協力し森林を保全していくことを条件に森の利用制限を緩和するケースがでてきています。つまり村人たちは、以前のように森と共存する暮らしを取り戻すことができるということです。

まずは村人が森林局や国立公園局と話合いを行うに際して「地図」が必要になってきます。
地図には村域や水源の保全・暮らしに必要な森の範囲が記されており、地図をもってはじめて森林局や国立公園局と森の管理・利用について十分な話合いができるようになります。

[写真]衛星写真を利用した地図の例
 

この考えは「共有林法」という法律を制定する動きにもつながっています。これは国有林のなかに村人の管理する保護林(水源などになる森)と利用林(生活の糧となる森)を認め、村人に森の保全を任せる法律です。
法案の審議はなかなか進まない状況にあるということですが、法案が通り共有林として認められるためには、〜反イ任粒萋阿任△襪海函↓⊃垢陵用に関する規則が定められていること、そして、C録泙あること、の3つの条件が整っている必要があります。精度の高い地図を用意しておくことは、森林保護の要として期待される共有林法に備える意味もあるのです。

今回訪問するのはチェンライ県のノンキョー村。これからコスモ石油エコカード基金の支援の下、地図づくりをはじめようとする村です。支援の開始という貴重な場に同席させていただくことになりました。
ノンキョー村は、チェンマイから北北東に車で約3時間。村の入り口には、タイの有名なビール会社の敷地があり、そこの検問を通り、村へと通じる道へとつながります。ビール会社までの道は快適でしたが、そこから先、村まではとんでもない凸凹のダート道。約15分かけて、ようやく村につきます。途中、ひょろ長い棒のような木が整然と植えられていました。どうやら換金作物としてのゴムの木のようです。

ノンキョー村に着いたのは夕方の4時。まだ周りは明るく、子どもたちが元気に遊んでいます。昔の日本みたいに、自転車のタイヤのフレーム部分を転がすなど、子どもたちは思い思いの遊びを楽しんでいます。

[写真]村の入り口                 


[写真]ノンキョー村の家
    

この日は村の各地区のリーダーが集まり、地図づくりの必要性・支援内容について説明会を行う予定です。
到着後さっそく、木村さんとユナシャ村長が夜からはじまる説明会について立ち話をはじめました。実はこの村は、木村さんが20年以上付き合いのある村で、以前から村の多くの方と親交があるということです。隣では、パンさんがさっそくGPSを持って、副村長のベンジャミンさんと話をはじめています。
地図づくりは、ひたすら山道を歩きGPSでこまめに測量することからはじまります。労力がかかる、とても地道な作業ですので、村人の理解と主体的な参加が不可欠です。

[写真]教会の入り口で。左から、ユナシャ村長、ベンジャミン副村長、パンさん、木村さん
 

[写真]GPSの説明 左がベンジャミンさん、右がパンさん。


[写真]地図づくりに使うGPS
   

[写真]村の奥の様子 森は山の頂きにわずか残っています。 


[写真]日が暮れるまで外で打合せ(左から、パンさん、ユナシャ村長、ベンジャミンさん、木村さん)
            

 [写真]右手前の家屋がこれから村のリーダーたちが集まり打合せを行うベンジャミンさんのご自宅。家の外は真っ暗闇になります。
 

説明会の場所はベンジャミンさんのご自宅。村のリーダーたちが次々に集まり7時過ぎにはじまりました。

最初にユナシャ村長から説明がありました。「森が消え、昔のようにその恵みを頼りにして生活することができなくなった。水質の悪化もひどく、土砂崩れなどの災害も起きている。生活を改善するためには森を中心とした環境を改善することが必要。これまでの環境破壊について私たち村人にまったく責任がないとは言えない。私たちは、村の将来を考え、自ら責任をもって行動を起こさなければならない。」

[写真]会議の様子
 
 

[写真]地図について説明するパンさん。右はユナシャ村長

 
村のリーダーたちは木村さん、パンさんの話に聞き入り、また、村の将来について互いに議論しています。
真剣な話合いを目の当たりして、村人たち自身の手で村の自然環境や暮らしを変えていこうとする瞬間に立ち会っていることが実感できます。
この日の説明会は、深夜12時まで続きました。

「森は季節によっていろいろな恵みを与えてくれます。またきれいな水を生み、生活を支えてくれます。しかし森を守るには植林だけでは解決できない複雑な問題がここにはあるのです。私たちはこの村でずっと生きていくために、守るべき森の範囲を明らかにしてくれる地図づくりに取り組んでいきます。」。
ベンジャミンさんが私の手を取り最後に伝えてきた言葉が心に残りました。

[写真]会議に集まった村のリーダーたち
 


これまでコスモ石油エコカード基金により地図づくりが進められた村は8村。それぞれの村において、村人自身の手による森林保全活動が展開されています。

地図づくりを終えた村は以下のとおりです。
2009年度
.曠ぅ椒鸞次淵船Д鵐泪じチャイプラカン郡)
▲泪ぅ檗璽ム村(チェンマイ県メーアイ郡)
サンパカー村(チェンマイ県メーアイ郡)
2010年度
ぅ好ーデンムアン村(チェンマイ県ドーイロ―郡)
ゥ離鵐ーノックヤン村(チェンマイ県メーアイ郡)
Ε離鵐僖汽鸞次淵船Д鵐泪じチャイプラカン郡)

現在も活動が続いている村は以下のとおりです。
Д僖鵐檗璽ぢ次淵船Д鵐泪じファーン郡)*
  *村の事情で作業が中断しています。
┐畋次淵船Д鵐泪じサンカムペーン郡)

そして、活動が始まったばかりの村として、先に紹介した
ノンキョー村(チェンライ県ムアン郡) があります。

 [写真] 今年4月に完成したスィーデンムアン村(チェンマイ県ドーイロ―郡)の地図(村の百科事典)。30ページあります。
 

[写真]航空写真を利用した地図。村域や森の範囲が示されています。
 

[写真]GPSを利用した測量図。共有林の範囲が示されています。
                            


植林だけではなかなか解決できない北タイの環境問題。最も効果的な環境保全活動の方法を模索する中で出てきた方法、その第一歩が共有林の活用を含めた森林保全のための地図づくりであると感じました。
地図を片手に山岳地帯で生活する村人たちが自らの森林資源の管理を行い、多様な自然に支えられた持続的な暮らしを実現できるようにする支援活動が、コスモ石油エコカード基金の支援によりここ北タイで着実に根付きつつあります。

「森(自然)を守ることは自らの身を守ることにつながる。」。

これは、タイだけではなく日本でも当てはまることではないでしょうか。
大げさかもしれませんが環境保全活動の原点ともいえるこの「つながり」をこのレポートを通じて少しでもお伝えできれば幸いです。

 [写真]Linkの皆さんと。左から、木村さん、パンさん、富田さん、筆者
  筆者が手にしているのが「村の百科事典(地図)」
 


レポーター 事務局 菊池

活動概要(北タイ山岳地帯 共有林地図作成)

北タイ山岳部では、地元住民は森のなかで持続可能な豊かな暮らしを営んできました。
しかし、国がすべての森林を「国有林」に指定し、地元住民が森に住めなくなりました。再び森での自然に支えられた生活を取り戻すためには、現在の「国有林」が「共有林」として国に認められることが必要です。そこで、「共有林」の申請に必要な地図づくりを地元住民とともに行っていきます。

支援開始:2008年下期〜
プロジェクトパートナー:NPO法人 Link・森と水と人をつなぐ会

※詳細は、コスモ石油エコカード基金HPをご覧ください↓
http://www.cosmo-oil.co.jp/kankyo/eco/pro_th.html (PCサイトへリンクします)

              タイ_ワークショップ.jpg

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